発達障がいのお子さんの教育や子育てに携わる中で
・すぐに忘れてしまう、集中力が続かない
・友達関係がうまくいかない(空気を読んだ言動が難しい、かんしゃくを起こす)
・食べ物の好き嫌いが多い
などなど、困った問題に直面することがあるのではないでしょうか
障がい特性や、そのお子さんの性格によって課題は様々かと思います。
今回は、私が支援学校教員時代に関わった自閉症のA君とのエピソードをもとに、
お子さんの課題を改善したい時、課題に取り組む時のポイントを、ご紹介したいと思います。
「ほめると伸びる! 3:1の法則」は、発達障がいのお子さんに限らず、どのお子さん
に効果のある方法だと思いますので、是非お試しください?
目次
一般的な自閉症の特徴
①自閉症とは?
自閉症は、心の病気だと誤解されることがよくありますが、親の愛情不足や育て方、ストレス
や精神的な問題が原因で起こる心の病気ではありません。
しつけや生活環境が悪くて発症するものでもありません。
自閉症は、生まれた時からの脳の機能障害です(広汎性発達障害の一つ)。
➁自閉症の特性は?
自閉症は、言語や認知能力、知覚の情報処理などに特徴があり、
「対人関係が結びにくい」
「コニュニケーションがうまく取れない」
「強いこだわりを持つ」
といった特性が現れます。
知的障がいを伴う場合と、知的障がいを伴わない場合があります。
②自閉症のサイン
・人と目を合わせない
・友達に共感を示さない
・相手が言ったことをそのまま反復する
・自分の関心のあることを一方的に話す
・独り言を繰り返す
・突然、かんしゃくを起こす
・音を不安がる
・一つの物事に極端にこだわる など・・・
参考文献→
もっと詳しく知りたい方は・・・
自閉症A君のエピソード
A君はどんな人?
・私が担任をした当時は、19歳(支援学校高等部卒業後の専攻科1年生)
・身長175㎝くらい ぽっちゃり体型
・軽度知的障がいを伴う自閉症
・目を合わせない
・よく独り言を言ったり、コマーシャルソングを歌ったりしている
・手をヒラヒラさせていることが多い
・時々ひどく怒る
・ジャンプしながら走っていく
※赤ちゃんの頃は、まな板を抱いているようだった(母談)
A君の得意なこと
・文字を書く(レタリング文字のような美しい字を書きます。)
・絵が得意(全国の町章、プロ野球球団のロゴ、テレビ局のキャラクター等描くのが得意)
・料理
・スキー(ボーゲンで滑ることができる)
A君の好きなこと
・絵を描くこと
・テレビコマーシャル
・女子アナウンサー(女子アナウンサーの真似をして話すと喜んでくれました)
・野球の本(球団情報や投法についてかかれてあるもの)
・インターネット
※子供の頃はプラレール
A君の課題
学校でのA君の課題は、「相手の顔を見て挨拶をする」「落ち着いて過ごす」「怒らない」
「自分に合った職場を探す」などでした。
また、体重が増加傾向で「ダイエット」も大きな課題でした。
A君は❌がキライ
学校では、A君独自の日誌を作り、日課表の記入や、目標の振り返りをしていました。
目標を書いて1日の終わりに目標を守れた時は⭕️、守れなかった時は△か小さな⚪︎を記入して
いました。
A君はチェック表に❌がつくことや、否定的な言葉を嫌がるお子さんでした。
(多くの発達障がいのお子さんも、健常のお子さんもA君と同じだと思いますが)
注意されることが多くなると、あ〜〜!!と声を上げながら、廊下を飛びながら
走って行ってしまうことも多くありました。
ハマると強い
こだわりが強いというA君の特性を生かして、課題だったダイエットに取り組みました。
目標体重を日誌に書き出し、毎日体重測定。
太りにくいメニュー、太りやすいメニューを教え、休日は料理本を見ながら自炊を行う。
毎日エアロバイクを30分。
ご家庭にも協力を仰ぎ、食事内容に気を配っていただきました。
自宅で取り組んだエアロバイクは、本を読んだり、テレビを見ながら、マイペースだったよう
ですが、毎日休むことなく漕ぎました。
そして、ゆっくりではありましたが、4ヶ月かけて、約8kgの減量に成功しました。
3:1の法則
課題に取り組むときの基本
「できないことは一緒に練習してできるようにする→できたら褒める」というのが、課題に取
り組むときの基本でした。ほめるとA君は喜んで、課題に取り組んでくれました。
相手の目を見ることは苦手でしたが、「目は見なくて良いから、相手の鼻を見て挨拶しましょ
う!」と伝え、毎朝、練習したら、できるようになりました。
取り組むのは1つの課題から
色々なことを頑張らせると、負担感が強くなり表情が悪くなってしまうA君でした。
そこで、たくさん課題があっても、取り組むのは1つだけに絞りました。
4つ課題があっても
3(とりあえず今は取り組まず見逃す):1(取り組む)
1つ注意するなら3つ褒める
1つ、何かを何かを注意したい! なおしたい! と思ったら、その子の良いところを3つ見
つけて、まずはほめる!ということも心がけました。
3(良いところをほめる):1(注意する、なおす)
些細なことをほめる
障がいのない子にとって普通にできることが、発達障がいの子にとっては、
当たり前でないことを教師や保護者が心にとめておくことがとても大切です。
ほめると、子供はやる気が出て、自己肯定感を育むことができます。
逆に、できて当たり前と言う感覚は子供のやる気や、自己肯定感を伸ばす機会を摘んでしまい
ます。
色々、問題を起こすと、先生も保護者も「何もほめるところがない」というような日もあるか
もしれません。
それでも、「今日も休まないで学校に来れてえらかったね。すごいよ!」と当たり前のことで
もほめてあげてください。
ほめることは、教育や子育てにおいて大切な技術だと思います。
「思ったらすぐにほめる」「繰り返しほめる」「些細なことでもほめる」ということを心がけ
ていきたいですね。
大事なのは信頼関係
ほめると信頼関係が深まる
コミュニケーションの苦手な発達障がいの子でも、あの人は自分のことをちゃんと見てくれて
いる、ちゃんと分かってくれているという感覚を持つことはできます。
できなかったことに一緒に取り組んで、できたらほめる、一緒に喜びを共有するということを
繰り返していくことで信頼関係を深めることができます。
信頼関係が深まると指示が通りやすくなる
発達障がいの子供に限らず、子供は自分のことをちゃんと分かってくれている人を好きになり
ます。好きな人の言うことは聞こうとします。
逆に、自分のことを注意ばかりする先生や保護者には心を開かず、ますます悪い言動をしてし
まいます。
行動そのものをやめさせる前に、子供が何を伝えようとしているのかを知ることが
大切です。先生や支援者が子供の行動の背景を理解し、子供の気持ちに共感することができれ
ば、子供は少しずつ心を開いていきます。
子供の課題に取り組むときに一番大切なのは、お互いの信頼関係を深めることです。
まとめ
「ほめると伸びる!育つ!」というのは、どのお子さんにも共通なことと思います。
課題に取り組む前に、お互いの信頼関係を築くことが大切なこと、
なおしたい課題がいくつもあっても、一気に取り組まないことをA君との関わりから教えれ、
その後の教員生活、そして教員を辞めて今の福祉サービスの仕事をする上でも大事にしている
ことです。
A君の気持ちを100%わかることはできなくても、そのほんの一部でも分かり合えた時の喜び
は何にも変えられない喜びで、私が福祉の仕事を続けている原動力です。
発達障がいにも、自閉症の他に、アスペルガー症候群、ADHD等と種類がいくつかあり、性格
や育ちにより特性も十人十色です。
よって課題への取り組み方も十人十色だとは思いますが、「ほめると伸びる!3:1の法則」
は、障がいのないお子さんにも効き目があるかと思います。
日々の教育や子育ての参考にしていただければ幸いです。